中古マンションの購入した後に、毎月かかる管理費・修繕積立金は、マンションによって金額が異なります。実際に費用が安く抑えられているマンションや高いマンションがあり、ついつい毎月の負担額を意識してしまいます。住宅ローンを毎月返済していく方にとっては、毎月のローン返済額と管理費・修繕積立金にかかる費用の合計額が、自分にとって十分に支払いできるかどうか検討して購入する事が大事であることは、言うまでもありません。できることなら、毎月の負担額は抑えたい、管理費・修繕積立金は安い方が良いと思う方もいるかもしれません。
但し、この管理費・修繕積立金は、マンションにとっては大変大切な費用であり、費用が安いマンションが良いマンションとは限らない事を理解する必要があります。
そして、管理費・修繕積立金が何に使われる費用なのか購入前に知っておく事は重要な事です。
『マンションは管理を買え!!』
マンションを検討する方にとって、良く聞くフレーズでは無いでしょうか。
実際にマンションは管理が非常に大切であり、管理が行き届いていないマンションは、快適な生活ができないばかりか、マンションの資産価値にも影響を及ぼす可能性があります。
管理費・修繕積立金は、このマンションを管理していく為に、必要な費用になります。また、管理といっても日常的な管理と長期的な管理の二つに分けられ、日常的な管理に充てられる費用が、管理費となり。長期的な管理に充てられる費用が、修繕積立金となります。
〇日常的な管理費用(管理費)
・エントランスや廊下等、共用部分の清掃費用
・管理人さんや清掃員の人件費
・共用部分の水道光熱費
・共用部分の火災保険やその他損害保険等にかかる費用
・エレベータや駐車場等共用施設の保守点検にかかる費用
〇長期的な管理費用(修繕積立金)
・一定期毎におこなう修繕費用
・不測の事故やその他特別な理由によって必要となる修繕費用
・敷地の変更や共用部分の変更または処分等に必要な費用
従って、毎月の負担額ばかりを気にするのでは無く、購入するマンションの管理費・修繕積立金がそのマンションにとって適正な金額であるかを検討することも重要です。
検討するマンションの管理費・修繕積立金の適正な金額を見極める方法と、マンションによって金額に差があるのかについて、例をまじえながら説明していきます。
今、Hさんが、2つの中古マンションを見学してどちらを購入しようか迷っているとします・・・
●販売価格:4,000万円
●管理費:月額15,000円 ●修繕積立金:月額5,000円
●販売価格:4,000万円
●管理費:月額15,000円 ●修繕積立金:月額10,000円
駅からの距離、価格、面積、方位、築年数、間取り、マンションの規模はほぼ同じ。違うのは、管理費・修繕積立金の内、修繕積立金の月額だけ・・・5,000円の違いだとします。
例えが極端すぎるかもしれませんが突っ込まないで下さい・・・ あくまで、解説しやすくするための例えなので・・・
Hさん 「AのマンションもBのマンションも、リフォーム室内は綺麗だったし、条件もほぼ同じだから迷うな~。駅は違うけど、会社までの通勤距離はほぼ変わらないし・・・」
不動産屋「Hさん、違うのは修繕積立金の月額です。Aのマンションの方が月額5,000円安いんですよ!」
Hさん 「確かに5,000円の違いは大きいよね・・・ でも何で5,000円も差があるんだろう・・・」
不動産屋「月額5,000円っていっても、ばかにしちゃいけませんよ!1年にしたら、5,000円×12か月で60,000円。10年払い続けたら600,000円の差になりますからね!」
Hさん 「確かにその差は大きいかも・・・」
不動産屋「Aのマンションにしますか?早く決断しないと売れちゃいますよ・・・」
Hさん 「住宅ローンも毎月返済しなきゃいけないし、月の負担額が抑えられるAのマンション買います!」
不動産屋「ありがとうございます!! それでは、こちらの購入申込書にサインを・・・」
ちょっと待った!!と言いたいところです。目先の負担額だけで判断すると、あとあと後悔する可能性があります。あなたは、ほとんど条件が変わらないマンションなのに、修繕積立金の金額が極端に安いマンションなんて無いと思うかもしれません。しかし、実際にそういったマンションは存在するのです。
それでは、修繕積立金が極端に安いマンションが何故存在するのでしょうか・・・
その要因としては、マンションの新築販売時にマンションの分譲事業者が極端に修繕積立金の金額を安く設定して販売していたからです。マンションの分譲事業者は、とにかく新築分譲マンションを完売させなくてはなりません。管理費・修繕積立金を安く抑えた方が購入者の毎月の負担額が抑えられる為、売りやすくなると考えたからです。修繕積立金は、定期的なマンションの修繕に使われる大切な費用です。また、マンションの修繕工事には高額な費用がかかる工事もあります。将来的に修繕工事が必要になった場合、修繕積立金の金額が安すぎると積み立てられた修繕積立金だけでは、修繕工事費用に不足が生じ、区分所有者から別途徴収しなくてはならなくなったり、マンション管理組合で金融機関から借り入れしなくてはならなくなったりする可能性があるのです。
平成23年4月に国土交通省が策定した『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』
マンションの新築分譲段階で修繕積立金の金額が極端に安く設定され、必要な修繕積立金が積み立てられず、修繕工事費用が不足してしまうといった問題もあり、策定されたのが『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』になります。
なお、このガイドラインは、新築時から30年間に必要な修繕工事費用の総額を当該機関で均等に積み立てる方式(均等積立方式)による月額を示したものです。この他の積み立て方式としては、積立額を抑え段階的に値上げする方式(段階増額積立方式)がありますが、この方式は、後から値上げをおこなう際に、区分所有者での合意が必要となり、合意が得られない場合必要な値上げができないリスクがあります。
『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』をもとにした修繕積立金の計算方法
≪例≫
専有面積:70㎡ 建物の階数15階未満 建築延床面積(5,000㎡~10,000㎡)
※機械式駐車場の修繕工事費用は駐車場使用料から賄う場合
【目安の平均値】 70㎡×202円/月=月額14,140円
但し、事例のばらつきが大きい為、「平均値」とともに「事例の3分の2が包含される幅をあわせて示すこととしています。
・70㎡×140円/月=月額9,800円 から
・70㎡×265円/月=月額18,550円 まで
【修繕積立金の目安】 月額9,800円~月額18,550円 (平均値)月額14,140円
このようなガイドラインで修繕積立金の目安を計算することによって、妥当な金額が徴収されているのか、判断することもマンション購入には大事な要素といえます。
但し、マンションによっては、修繕積立金の金額が安く設定されているマンションでも、修繕積立金の値上げが予定されているマンションや、長期修繕計画書が作成され段階的に値上げする計画がされているマンションもありますので、事前に不動産会社に頼んで、検討するマンションの管理状況や長期修繕計画書等を見せてもらい総合的に判断することをお薦めします。